ポンプ揚程・動力・NPSHa 計算
吸込・吐出条件から遠心ポンプの全揚程・水動力・軸動力・電動機所要動力を計算し、標準電動機の推奨容量を選定します。あわせて NPSHa を計算し、NPSHr との余裕を4段階で一次判定します。
入力
吸込側 (1)
吐出側 (2)
配管損失 hf1・hf2 は 配管圧力損失 計算 で求めた値を入力できます。入れるのは摩擦+継手の損失のみです (リンク先の内訳 「損失水頭 (摩擦+継手)」[m] を単位「m液柱」で転記)。合計 ΔP には高低差の項が含まれるため、そのまま入力すると z1・z2 と二重計上になります。
計算結果
全揚程 H
42.932 m
推奨電動機 (余裕率込み)
11 kW
全揚程の内訳
圧力差 (P2−P1)/(ρg)20.431 m
実揚程 z2−z113.000 m
配管損失 (hf1+hf2)/(ρg)9.500 m
全揚程 H42.932 m
動力
水動力 Pw5.837 kW
軸動力 Pw/η (η=0.65)8.980 kW
電動機所要 (余裕率込み)10.327 kW
推奨標準電動機11 kW
NPSHa (有効吸込ヘッド)
圧力頭 (Patm+P1)/(ρg)10.351 m
蒸気圧頭 −Pv/(ρg)−0.239 m
液面高さ +z12.000 m
吸込損失 −hf1/(ρg)−0.511 m
NPSHa11.601 m
NPSHr を入力すると余裕の4段階判定を表示します。
標準電動機系列 [kW]: 0.2 / 0.4 / 0.75 / 1.5 / 2.2 / 3.7 / 5.5 / 7.5 / 11 / 15 / 18.5 / 22 / 30 / 37 / 45 / 55 / 75 / 90 / 110 / 132 / 160 / 200
ポンプ揚程・動力・NPSHa の計算式
1. 計算の考え方
ポンプが流体に与えるべきエネルギー (全揚程 H) は、吸込側と吐出側のあいだの 次の 3 つの差の合計です。
- 圧力差 — 吐出先と吸込元の容器圧力の差を液柱高さに換算したもの。
- 実揚程 — 液面の高低差 z2 − z1。純粋に持ち上げる高さです。
- 配管損失 — 吸込・吐出配管の圧力損失の合計を液柱高さに換算したもの。
動力は、全揚程から水動力 → 軸動力 (ポンプ効率で割る) → 電動機所要動力 (余裕率を掛ける) の順に求め、標準電動機系列から「所要以上で最小」の容量を選定します。 NPSHa (有効吸込ヘッド) は、吸込側でキャビテーションに対して使える圧力余裕で、 ポンプ固有の必要値 NPSHr を上回っている必要があります。
2. 使用する式
- 全揚程
- H = 1000·(P2 − P1) / (ρg) + (z2 − z1) + 1000·(hf1 + hf2) / (ρg)
- P1・P2 はゲージ圧のまま差を取ります。圧力 [kPa] を水頭 [m] に直す係数は 1000/(ρg) です。
- 動力と電動機選定
- 水動力 Pw = ρ · g · Q · H / 1000 [kW]
軸動力 Ps = Pw / η 電動機所要 Pm = Ps × 余裕率 - 標準電動機は Pm 以上で最小の容量を標準系列 (0.2〜200 kW。37 kW までは JIS C 4210、45 kW 以上はメーカー標準) から選びます。
- NPSHa
- NPSHa = 1000·(Patm + P1 − Pv) / (ρg) + z1 − 1000·hf1 / (ρg)
- Patm は大気圧 (絶対圧)、P1 は吸込容器のゲージ圧、Pv は液温での飽和蒸気圧 (絶対圧)。z1 は液面がポンプより下 (吸上げ) のとき負になります。
- NPSH 余裕の一次判定
判定 条件 危険 余裕 ≤ 0 警告 余裕 < 0.6 m または 比率 < 1.1 要確認 余裕 < 1.0 m または 比率 < 1.2 良好 余裕 ≥ 1.0 m かつ 比率 ≥ 1.2 - 余裕 = NPSHa − NPSHr [m]、比率 = NPSHa / NPSHr [−]。 一次スクリーニング用のしきい値です。最終判定はポンプ形式・流体・運転条件に応じて ANSI/HI 9.6.1 等で確認してください。
3. 記号と単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| H | 全揚程 | m |
| Q | 体積流量 | m³/s |
| ρ | 密度 | kg/m³ |
| P1, P2 | 吸込・吐出容器の圧力 (ゲージ) | kPaG |
| z1, z2 | 吸込・吐出の液面高さ (ポンプ基準) | m |
| hf1, hf2 | 吸込・吐出配管の圧力損失 | kPa |
| Patm | 大気圧 (絶対) | kPaA |
| Pv | 液温での飽和蒸気圧 (絶対) | kPaA |
| η | ポンプ効率 | — |
| g | 重力加速度 9.80665 | m/s² |
4. 入力値の目安
- ポンプ効率 η — 遠心ポンプの概略値で、小型 (〜数 kW) は 0.4〜0.6、中型以上は 0.6〜0.75 程度。正式にはメーカーの性能曲線値を使います。
- 電動機余裕率 — 1.1〜1.2 が一般的。運転点の変動が大きい 用途では大きめに取ります。
- 配管損失 hf1・hf2 — 配管圧力損失 計算 で求められます。入力するのは直管摩擦と継手の損失のみで、高低差の項 (ρ·g·Δz) は含めません — 高低差は z1・z2 で別に計上します。圧損ツールの内訳「損失水頭 (摩擦+継手)」[m] を単位「m液柱」で転記すると確実です。吸込側 hf1 は NPSHa を直接減らすので、吸込配管は太く短くが原則です。
- NPSHr — ポンプメーカーの性能曲線に記載された値を 使います (運転流量での値)。
- 蒸気圧 Pv — 液温で大きく変わります。高温液 (温水・凝縮水) は Pv が大きく NPSHa が急減するため、特に注意が必要です。
5. 適用範囲と注意点
- 非圧縮性の単相液体・定常運転が対象です。二相流・スラリーは対象外です。
- 高粘度液 (目安 20 mPa·s 超) では遠心ポンプの揚程・効率が低下します。HI の粘度補正等による確認が必要です。
- 速度水頭差 (v2²−v1²)/(2g) は容器間の移送では通常小さいため無視しています。 ノズル直結など流速差が大きい系では別途考慮してください。
- NPSH 判定は一次スクリーニングです。最終確認はポンプ形式・流体に応じた基準 (ANSI/HI 9.6.1 等) とメーカー確認によります。
6. 出典
- JIS B 8301 — 遠心ポンプ性能試験方法 (揚程・動力の定義)
- ANSI/HI 9.6.1 — Rotodynamic Pumps Guideline for NPSH Margin
- JIS C 4210 — 一般用低圧三相かご形誘導電動機 (標準出力系列は 0.2〜37 kW。45 kW 以上はメーカー標準系列)
- 機械工学便覧 / ポンプ便覧 — 全揚程・動力計算の標準式